登校拒否や引きこもり、休学・留年、退学。転職・求職、そして退職。私たちが生きていく中で、当初想像もしていなかった方向に事態が進んでいくということが多くあります。結婚や離婚もそうです。最初から離婚するつもりで結婚する人はいないでしょう。
就職でも、自分の希望する職種や憧れの会社に入るために努力し、試験を突破して晴れがましい気持ちで入社したはずです。しかし、気づくと毎朝会社を休みたくなったり、職場を転々と渡り歩いているという人もいます。学校は一応、入学から卒業まで期限があるものなのでどこかのタイミングで仕切り直すきっかけをもつことが期待できます。
結婚は期限がありませんが、もしも離婚を考えなくてはいけなくなったら、離婚に至る決め手や法的に離婚できる事由が示されています。では、仕事はどうでしょう。仕事には期限や区切りがありません。生活を維持するために、簡単にやめるわけにもいきません。住宅ローンの返済や介護に係るお金がずっとかかっていく日本では、「死ぬまで仕事」と感じている人も多いでしょう。
定年退職があっても平均寿命が長く、年金支給年齢が引き上げられていくこのご時世では、卒業や離婚のようにきっぱりと辞めることは難しいですよね。社会人として働いていく長い人生の中で、仕事を辞めたいと考えることは誰しもあるでしょう。そしてそれは、それ相応の理由があり甘えから来ていることではないでしょう。
「甘え」ではない辞めたい理由
甘えではない仕事を辞めたいという理由には、どのようなことがあるのかを整理してみましょう。
【甘えではない職場を辞めたい理由】
- 家事との両立が難しい
- 働いていることで家族が不和になりそう
- 職場の人間関係が悪い
- 業務が苦痛
- 心身に悪影響を及ぼしている
- もっとスキルアップしたい
これらを大きく分けると「家庭と仕事のバランス」「職場内の事情」「自分の生き方」の3点において、単に飽きっぽさや甘えではなく職場を辞めたいと考えるだけの事情があると考えられます。
仕事を辞めたい3つの理由
では、甘えではない仕事を辞めたい理由について一つずつみていましょう。
1、家庭と仕事のバランス
女性の場合、家庭と仕事のバランスがとれた毎日を維持できるか否かが仕事を続ける上で、とても重要なことになるでしょう。やりがいがあって充実感を感じて仕事をしていても、悲しいことに家族にとってはそれがそれほど重要ではないということがあります。それは、女性を見下したり、妻として母として家庭を顧みないというような強いプレッシャーではありません。純粋に夫として、子供として、大好きな妻(母)につい甘えてしまうのです。
その結果、働く女性は家族に対する愛情から仕事を辞める人もいます。これは決して仕事を簡単に排除するということではありません。家族としての在り方を考え、皆にとって良い方向に向かうために「子供が小さいうちは家庭を優先する」という決断をする女性が多いということです。
2、職場内の事情
職場内の事情で会社を辞めるケースでは、労働条件や、人間関係が辞める理由として考えられます。これらの諸問題も、甘えやわがままとは異なります。業績不振で昇給がなかったり、賞与が規定通りに得られないことで生活苦になる人や、ローンの返済計画が立ち行かなくなる人がいます。また、職場の人間関係の悪さが許容範囲を超えてしまうと、毎日苦痛な気持ちで仕事をしなくてはなりません。ストレスから病気になってしまうことも考えられます。
このような場合、職場を変え環境を変えることが自分の健康を守ることになるので、職場を辞めるという選択は決して軽い考えではありませんね。
3、自分の生き方
安定した会社に勤め、人間関係も業務も順調。一見して辞める理由がないように見える人も、仕事を辞めたいと考えることがあります。それは、別のことにチャレンジしたいと考えている人や、持っている技能や資格をもっと生かしたいと思っている人です。会社に不満がなくても、自分の生き方について理想の実現を目指す人は、今の仕事を続けていても先に進めないと判断することが考えられます。
今、会社で重役を担っている人たちは経済成長期に人件費を多く投入できた時代に就職した人たちです。そのため終身雇用や年功序列が成り立っていました。しかし、経済成長が停滞している現代では、終身雇用制度は崩壊していると言われています。現代は、退職まで同じ職場で働き続けることに大きなメリットを感じられません。
そのため、安定した会社で働いている人の中でも「自分が就職活動した時は希望の業界に就職できなかったが、タイミングをみて転職したい」と考え、タイミングとチャンスをうかがっている人もいます。
「仕事を辞めたい」を責められてしまった時の対処法。
最後に、もしあなたが甘えやわがままではなく仕事を辞めたいと思っていることに対して誰かから責められた時の対処法をお伝えします。これもこれまで見てきた3点に沿って説明します。
【理由別・甘えではない職場を辞めたい理由を責められた時の対処法】
1、家庭と仕事のバランスで辞めたいとき
「自分にとって、今は人生のなかで家族を優先したい時期だと判断した」というスタンスでいましょう。会社とは違う「妻」「母」というあなたの立場で決めた、ということを表明すると、相手も興味本位では介入できません
2、職場内の事情
職場での待遇や人間関係では「辛抱が足りない」「あなたの思い込み」「流せばいい」というようなことを周囲から言われるかもしれません。しかし、周りがどう言おうと、当事者にとって事態は深刻です。眠れないほど悩んでいるということや病気になりそう、医師に相談している、など自分にとって不利益が生じない範囲で、具体的に自分がどのような状況に陥っているかをオープンにしてみましょう。
3、自分の生き方
これは、あまり周りから責められることはないかもしれません。もしもあるとしたら、自分の生き方を貫く姿勢に対する嫉妬かもしれません。自分の理想や生き方、そのために努力してきたことや取得している資格などを明らかにすることで、周囲が口出しできることではないと感じてもらうことがきっとできるでしょう。
まとめ
甘えではなく仕事を辞めたいと考える時。大きく3つに分けてみてきましたが、更に2つに大別するとそれは「正」「負」どちらかの心境や状態にあるということになります。家族を優先することや、自分のしたいことを始めるために会社を辞めるのは、理想の将来像を持っている心境なので「正」。職場の事情(給与体系や人間関係)を感じて辞めるのは、将来に希望を見出せない心境なので「負」です。
正と負、これは互いに対極にあり、正は良いことで負が悪いことのように感じられますが、実はどちらも共通して「今よりもよくなりたい」という思いが根底にあります。そのことから、今回みてきた甘えではない仕事を辞めたい理由にはどれも将来への期待と希望があると言えるのです。仕事を辞めることで自分を責めたり、会社に対しての後ろめたさを感じる必要はないのです。