同調行動を意識的に使えば人間関係や物事を円滑に出来る!

相手の心を開く手法の一つとして、相手の動きや言葉を真似る「ミラーリング」という手法が用いられることがあります。このミラーリングは、介護の現場では認知症の方が話す言葉を介護者が真似ることで「同調してくれている」「この人は仲間だ」という安心感を相手に抱いてもらうという目的があります。

 

認知症の方は今までできていたことが上手く出来なかったり、知っている人なのに誰かが分からなくなる、今が何時で何をする時間かがわからないなどの混乱と不安に心が覆われています。そのため、認知症の治療や悪化防止ではいかに不安を払しょくし安心感をもってもらうことができるのか大事なのです。

 

このミラーリングは、「同調行動」のひとつです。

 

同調行動とは考えや意見が違っていても、周囲の人たちと思わず同じ行動をとってしまう、という心理現象です。この同調行動を理解することで人間関係を上手く築くことも可能になります。

 

同調行動とは

意見や考えが違うはずなのに多数派の行動と同じ行動をとってしまうこと、それが同調行動です。同調行動の具体的な例を紹介します。

  • 皆が見ている方向を見てしまう
  • レビューの評価の高い商品を購入する
  • 流行の物を身につける、流行のことをする
  • 周りが走っているから走り出す
  • 隣の人が高齢者に席を譲ったから自分も次に席を譲る

私たちの生活の何気ない場面で同調行動が起きているのですね。

 

ここにあげた例はほんの数例ですが、よく見ると同調行動には無意識なものと意図的なものがあることに気が付きます。

 

無意識な同調行動

先にあげた例の中で「皆が同じ方向を向いているからそちらを向いてしまう」ということや、「みんなが走り出したから自分も走り出す」ということは無意識な同調行動です。

 

何もないのに数名が空を見上げていたら「おや?何かな」ということになりますし、みんなが走り出したら「なんだかわからないが、自分も走らなくては」という焦りや危機感を抱いてしまいます。

 

意図的な同調行動

一方、電車のなかで思いやりシートに腰かけていた時、隣の席に座っていた若者が乗ってきた高齢者の方に席を譲ったとします。それほど電車は混んでいませんが、その若者の行動から「次の駅で年配の方が乗ってきたら、自分も譲らなくては」と身構えてしまうのではないでしょうか。

 

そして、次の駅では降りる人もあり、他の席が空いているにもかかわらず積極的に自分が座っている思いやりシートの席を譲るという行動に出ることになるかもしれません。

 

また、旅行で泊まるホテルや行きたい場所、購入したいお土産などもインターネットの口コミやレビューを見て「これはいい」と判断してしますことがあります。

 

それは、レビューが最高値の5ではあるものの、レビュー件数が10件以下の商品だとしても、高評価と判断してしまうのです。

 

レビュー数の多さや評価の高さイコール、「みんなが認めているから間違いない」「身につけても恥ずかしくない」という心理が働くこともあります。それは流行に流されるという同調行動と同じ括りで考えられるのではないでしょうか。

 

無意識な同調行動、意図的な同調行動、どちらも悪いことではありませんし、人間の心理として十分理解でき自分にも身に覚えがあることです。そうした意味から、これらの同調行動には人間関係に良い効果をもたらす力があると考えられます。

 

同調行動の活用法

人間関係において同調行動の心理を上手く活用する方法をみていきます。

苦手な人との緊張感を解く

冒頭の認知症の方に用いた同調行動の一つである、ミラーリングの方法を活用して人間関係を良好にする方法があります。

 

例えば、職場で近寄りがたい人や何となくいつも気を遣ってしまう人がいるとします。昼食時間や会社の集まりなどの場では、何とかいつのも緊張感をなくして親近感を抱くことができる関係になりたいところですよね。

 

そのような場合の方法として、先ずは相手の好みに合わせることをお勧めします。

 

例えば、食事に一緒に行った時、相手が注文するものを自分も頼むなどいいですね。「私も、〇〇さんと同じくビールで」「私もその日替わりランチが食べたい」「私も冷たい飲み物は苦手なので温かい方で」これだけでも、相手の人は自分と好みや感覚が合うと感じることでしょう。そして、あなたに親近感を抱くでしょう。

 

相手の行動を変える

また、子育てや集団の場においての困った人を同調行動で変えるという効果も期待できます。

 

子育てで同調行動

子どもの個性や感受性は大事にしたいもの。何でも人と同じでなくてはならない、人と違うことはおかしい、と考えることは親の勝手な感覚です。大人の思い込みや決めつけ、~すべき、という考えは子供を傷つけていまいかねません。

 

しかし、マナーやルールを身につけるという意味では、集団を真似ることや同調行動を効果的に活用するのは得策でしょう。

 

具体的には、ごみをゴミ箱に投げる習慣が身についていない子供や後片付けを率先してやらない子供に対して、きちんとやる子を見て真似るような場をつくることです。保育所や幼稚園では先生が指導して促しくれますが、普段の生活で自発的にできるようになるということが一番望ましいです。

 

兄弟や友達がゴミ箱に向かう行動を褒めることや、親や家族が手本を示すこと、基本的なことのようですが家族である複数人で取り組むことで、子供の同調行動を引き出すことができます。

 

すぐに行動に移すこということが大切なので、家族みんなで何かを食べた後は大人や兄弟がそろって台所に自分で食器を下げに行くとか、席をたつまではしなくてもテーブルの上のごみや皿を片付けるなどしてみると良いでしょう。

 

会社で同調行動

会社においても、例えば食べた後のごみや残りをいつまでも片づけない人がいるとします。そのうちやろうと本人は思っているのでしょが、他の人にとってはいつまでもカップラーメンの汁が入ったままの容器が放置されたままでは不快です。

 

不快と感じている人たちで、食事の後のごみ捨てを日課にしてみてはどうでしょう。昼食後に一旦、午前中までのごみをまとめることをやって見せるとどうでしょう。食後の休息に入る前に皆がごみ箱に向かい、袋をまとめる行動に出るのです。

 

これは、世界に誉高い日本人のごみの自主回収の行動をイメージしましょう。

 

サッカーワールドカップの試合終了後、日本のサポーターが自主的にごみの始末や自主回収をし、世界に感嘆されました。そして、他の国のサポーターもその行いを真似するようになったという状況に似ています。

 

規模は大きくても小さくても、同調行動ということを意識すると望んでいる効果が得やすいというメリットがあるということがわかりますね。

 

では、同調行動はメリットばかりなのでしょうか。

 

次に、同調行動におけるメリットとデメリットについてまとめていきます。

 

同調行動によるメリット

同調行動のメリットはここまで紹介してきたことを参考にまとめると以下のようなことになります。

  • 相手に信頼感や安心感を抱いてもらうことができるきっかけになる
  • 相手に好印象や親近感を与え、緊張感が解ける
  • こちらの望む行動や反応を得ることができる

 

同調行動によるデメリット

では、同調行動のデメリットとはどのようなことでしょう。それは、注意点でもあります。

  • よく知らない相手、その場しのぎで同調行動してしまうことに注意

 

どういうことかというと、同調行動をしておけば何とかなると安易に考えてしまうことです。深く考えずに手っ取り早く仲良くなる、信頼を得るつもりで同調行動をするということは相手の存在を軽んずる行動になってしまいます。

 

「とりあえず」という意図は、態度やその後の行動で相手に伝わってしまうものです。人間関係を良くしようとして逆効果になってしまっては元も子もありません。

 

同調行動する上での心構え

最後に、同調行動する上での心構えをまとめます。同調行動におけるデメリットで述べた様に、同調行動を過信して安易に同調することは危険です。

同調行動心得 その1:同調行動とは何かを押さえておく

同調行動は、相手に安心感や親近感を与えるために自分の意見に行動を合わせること

 

同調行動心得 その2:同調行動の目的の理解と努力が必要

同調行動の目的は人間関係を円滑にする、物事が揉めるのを回避するということ。本当の信頼関係や人間関係にはコミュニケーションを図るという努力や信頼を得るために仕事に打ち込むという努力が必要。

 

同調行動心得 その3:同調行動と自分の本心を顧みる

今回、同調行動を知ることで自分で意識して誰かに行ってみる人がいることでしょう。しかし、自分自身が誰かの同調行動にのっているということもあるかもしれません。同調行動は無意識なことも多く、悪気や邪念が伴うことではありませんが、誰かの同調行動にのることで何らかの問題が起きてしまうことも考えられます。

 

それは、自分では気が付かない間に誰かの意図的な同調行動によって、特定の人を傷つけたり、仲間外れにしてしまう可能性があるからです。同調行動を悪い方に利用されないためにも、時には自分の本心と向き合うことが大切です。

 

まとめ

今回は同調行動についてみてきました。人の心理とは不思議なものです。今回みた同調行動の他にも、心理学の世界を理解することで私たちは相手の心理や行動をコントロールできることがまだまだあるのかもしれません。

 

しかし、にわかな知識や小手先の技術で人と操るということは大変難しいことですし、そのような考えはおこがましいことです。

 

良好な人間関係の構築の根幹は、相手を理解し、一面だけをみて全人格を否定しないという気持ちです。

 

同調行動も、意図的ではなく心の底から相手を受け入れ、同調できる寛容さがあれば計算高く考えなくても、やさしさや寛容さから自然にできてくることなのではないでしょうか。

 

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