人間関係を突然バッサリ切る「人間関係リセット症候群」とは?

ふと、周囲の人たちとの関わりが煩わしくなってしまうことがありませんか。会うのも話すのも億劫になってしまうことが。とは言え、社会生活を送っている上では、そう簡単に人間関係を切ることは出来ませんよね。

 

しかし、ある日突然、人間関係を切ってしまう人が増加しているそうです。この状態は「人間関係リセット症候群」と言われています。リセットとは、ゼロにすること。人間関係を切ってゼロにすることを躊躇しないこの症状、背景にはどういうものがあるのでしょうか。

 

「人間関係リセット症候群」ってどんな症状?

人は誰しも、様々な人達と関わりを持って生活しています。その人間関係には、友人、会社関係、親類、近所などがあり、その関係の深さには個人差があるでしょうが、突然それらの関係を全くゼロにすることは、常識的にはあり得ないことではないでしょうか。

 

しかし、昔からあるこれらの人間関係プラス、近年では新たな人間関係の分野が登場しました。それは、ネット上での人間関係です。

 

新たな人間関係の登場

Facebook、LINE、twitterなど、SNSを通じて、簡単に誰とでもつながりが持てるようになりました。顔を合わせなくても、声に出して挨拶を交わさなくても、お互いについて深く理解しなくでも、簡単に人とつながれます。そうして、そこで人間関係を築いたような気になっているのです。

 

相手が自分のことをよく知らなくても、自分が相手のことをよく知らなくても「友達」になれるのです。この人と仲良くなれるかな、自分のことをどう思っているかな、もっと仲良くなりたいな、なんていうドキドキ感とか、一緒に笑いあって関係が深まったと実感した時の喜びなどが無いままに築ける人間関係なのです。

 

まさに“EASY COME,EASY GO“です。簡単に手に入るものは、簡単に失う。そして失ったところで、思い入れもないので後悔などはありません。

 

このように、ネット上では、やり取りの上で、ちょっと気に入らないことがあったりすると相手をブロックするなど、関係をバッサリ切る人もたくさんいます。

 

「人間関係リセット症候群」というのは、ネットスラングです。ネット上で、あまりに当たり前のようにあふれるバッサリ行為について、まるで病気の症状のように名付けられものです。医学的にはそんな病名のものは存在しないし、実際に病気でもありません。

 

このネット上での関係性が当たり前となり、現実の生活においても、人間関係を軽視して簡単に切る人たちが増えてきたのです。

 

自分にとってラクな人間関係以外はブロック

ちょっと面倒だな、と思う相手をSNS上でブロックして、電話にもでない。自分がストレスなしで付き合える相手だけに人間関係を限定する。でも、その相手との間にストレスが新たに生じると、またブロック。この繰り返し。

 

簡単に仕事を辞めて、転職を繰り返す

どんな職場でも、多かれ少なかれストレスは生じます。突然すべて面倒になり、後先考えずに仕事をやめることもしばしばです。

 

頻繁な引っ越し

居住していると、少なからず周囲の人との人間関係が発生します。些細なことが引き金となり、誰も自分のことを知らない場所に行きたいという衝動にかられます。引っ越しにはお金も労力もかかりますが、それよりも人間関係を切ることを選ぶのです。

 

人間関係をリセットしてしまう原因は何なのか

人間関係を切ることも辞さず、簡単にリセットしてしまう原因に、SNS上での人間関係の増加があることはお話しました。それ以外に、その人の持つ性格や人と関わる時のクセなども関係するようです。

 

無理をしてでも人に合わせようとするクセ

どうしても合わない、という相手がいます。価値観や相性というものがあるので、それは仕方のないことです。職場などで、そういう相手とどうしても関わらなくてはならないこともあります。適当にうまく合わせられると良いのですが、真面目な人や気を遣いすぎる人は、自分を押し殺してでも合わせようとします。この無理が限界までくると、関係のリセットボタンを押してしまうのです。

 

人の目が気になって仕方がない性格

周囲の人から良く思われたい、嫌われたくない、笑われたくない、馬鹿にされたくない…。自分がどうしたいか、どうありたいかではなく、周囲の人からの評価に重点を置いていると、自然体で生きることが出来ず、精神的にクタクタに疲れてきます。これが高じて、「もう疲れた、もうやめた」と、何もかも嫌になって、人間関係を切ることがあります。

 

また、「笑われたくない」「馬鹿にされたくない」という気持ちが強いので、なにか失敗したりして恥ずかしい思いをすると、発作的にリセットボタンを押すこともあります。

 

例えば、仕事のプレゼンの際に、準備不足から散々突っ込まれて答えられず、冷や汗ダラダラ、周囲は失笑…。それが出社拒否になってしまうことも。体育の授業中にひとりだけ課題がこなせず、クリアして待っているみんなを前にプライドがズタズタになり、二度と登校出来なくなった人もいました。

 

価値を見出せない人間関係

その人間関係において、まったく楽しさを感じられない場合があります。話の内容が、上辺だけの取り繕ったものだったり、はたまた噂話や悪口ばかりだったり。もっと自分の考えや理想などを本音で話し合いたくても、それが無理なコミュニティであれば、身を引きたくなりますよね。もっと成長できる人間関係を求めることは、ポジティブで良いようにも思えます。

 

とは言え、突然リセットボタンを押されて切られた側はどうでしょうか。まったく理由がわからず混乱するかも知れず、さすがに気の毒です。黙ってスパッと切るのではなく、なんとなく自分の気持ちを伝えながら離れていくのが思いやりなのでは?

 

人間関係リセット症候群になりやすいタイプ5選

人間関係リセット症候群になりやすい性格の傾向があります。その特徴はどんなものか見てみましょう。5つの特徴がありますが、当てはまるものが多い人ほど、なりやすい傾向があります。

1.自分より相手を優先する

自分が行きたい場所よりも相手が行きたい場所を選ぶ。自分は前日お寿司を食べたので洋食や中華を食べたくても、相手がお寿司を食べたけいのならばお寿司屋へ行く。自分の希望を提示もしないままに、相手が喜ぶことを優先します。それは優しさゆえにでもあるのですが、自分のことは大切にしておらず、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでいます。

 

2.自分をさらけ出せない

人からどう見られているかを過剰に気にしたり、相手に気を遣いすぎるタイプの人です。自分の本心を伝えることが苦手なので、なかなか人と打ち解けることも出来ません。表面上だけの付き合いになりがちで、真に心を許せる相手と出あうことが難しいタイプです。人間関係にストレスを抱きやすい人だといえます。

 

3.完璧主義者

自分に対しての理想がとにかく高い人です。人から優秀な人間だと思われたい、高い評価を得たいという気持ちが強すぎるのです、評価をしてくれない相手だと感じれば、関係を切ろうとします。また、評価を落とすようなミスをしてしまった時に、それを目の当たりにした相手とも関係を切ることを望んでしまいます。ミスを自分で笑える人間になれれば、さぞかし生きやすくなるのでしょうが…。

 

また、人間関係においても完璧主義が頭をもたげて、リセットしようとすることもあります。一見、仲良くしている相手であっても、言動などに少しでも気に障ることや嫌なことがあると、シャットアウトする傾向もあります。こんな嫌なところもあるけど、こんな良いところもある。だからO.K!とはなりません。こんなに良いところも色々あるけど、こんな嫌なところがある。だからダメ!という考え方なのです。

 

4.高すぎるプライド

人間関係において、相手から切られる前に、自分から切る、がプライドの高い人間の鉄則です。もし、相手から切られてしまうと、プライドはズタズタです。自己肯定感もガタ落ちとなり、精神的に参ってしまうこともあります。

 

まるで人間関係に勝ち負けを持ち込んでいるようにも見えます。プライドや勝ち負けにこだわるなら、本当に心を許せる温かい人間関係を築くことは困難なのではないでしょうか。

 

5.一人の時間が一番好き

性格や趣向は人それぞれです。たくさんの人たちと賑やかに過ごすことが好きな人ばかりではありません。本来、ひとりで静かに過ごすことが好きなタイプもいます。

 

それでも、子どもを持つ親であれば、そこにコミュニティが発生します。いわゆる「ママ友」です。たとえその付き合いが面倒で苦手であっても、子どものことを思えば無下にも出来ず、仕方なしにお付き合いしている場合もあるでしょう。賑やかなお喋りや大きな笑い声があふれる集まりの中で、笑顔を作ってはいても「早く帰りたい」と思っていたりします。家に帰ったとたんに、どっと疲れが出てぐったりしてしまいます。

 

そんな場合、子どもの卒業などでお付き合いする必要がなくなったと判断した途端に、その人間関係をスパッと切ることもあります。こうすることで、解放感でいっぱいになるかも知れません。そんな場合は、ミッション完了、ということでリセットしても良いのではないでしょうか。子どもが卒業するまでは、リセットボタンを押すこともなく、子どものためを思って頑張ってきたのです。

 

その先も苦手な人間関係をズルズルと続けていく必要はないはずです。本来の自分を大切にして自分の心地よい人生を歩んでほしいものです。

 

人間関係をリセットしたくなった時には

人間関係をリセットすることは、その人と場合によっては必要なこととも考えられます。その人間関係が自分の心身を疲弊させるだけのものであれば、逆にリセットが必要といえるでしょう。

 

ただ、「なんとなく面倒」「嫌なこと言われた」などの理由で簡単にリセットボタンを押すのは考え物です。どんな人間関係にも、少なからず面倒なことが発生するものです。その度にボタンを押し続けていると、気づいた時には、自分の周囲には大切に思える人が一人も残っていないでしょう。

 

笑顔とあいさつは自分から

職場やご近所など、もともと自分の好き嫌いに関わらず、お付き合いの必要がある人たちがいます。この人嫌だな、苦手だな、と思う相手も少なからずいるかも知れません。人間関係においては、だいたいこちらが好感を持ってない場合は相手も同じようです。こちらの気持ちが顔や態度に表れて、相手に伝わってしまいます。自分のことを良く思っていない相手に対しては、大抵の場合、好感を持つことは難しいと言えるでしょう。

 

相手に好感を持っていない者同士の関係は、ぎくしゃくとして居心地の良いものであるはずがないですよね。そのコミュニティ自体から逃げ出したくなって、リセットボタンを押したい衝動にかられることがあっても不思議ではないです。

 

でも、ちょっとだけ自分のやり方を変えれば、人間関係が好転することもあるのです。苦手な相手にでも、まずは自分から挨拶してみてください。相手の反応は、傷つけられるようなものかも知れません。そんな時には「挨拶なんてしなければよかった!」と自分を恥じたり、悔しい気持ちになるのは当然のことです。

 

でも、落ち込まないでください!「笑顔とあいさつ」は、先に向けた方が勝ちなのです。あなたの勝ちです。堂々とした態度でいればいいのです。これからも「笑顔とあいさつは自分から」を実行できれば、自然と周囲との人間関係にも良い変化が訪れるでしょう。

 

「ネームコーリング」を活用してみる

「ネームコーリング」という言葉を聞いたことはありませんか?これは心理学で用いるテクニックで、意識して相手の名前を呼ぶことです。会話の途中で、相手の名前を呼ばずにすませるより、「〇〇さん」と呼びながら話すと、好印象を与えるのです。

 

なんとなく名前を呼ぶのが気恥ずかしいこともあるかも知れません。「馴れ馴れしいかな」とか不安に思って口に出せないこともあるでしょう。しかし、会話の中で自分の名前を呼ばれると、無意識に「この人は自分に好意を持っている」と感じて、自分もその相手に好意を抱くようになっています。

 

呼びかける時も、「ちょっと…」などで済ませていませんか?「〇〇さん」と呼ばれると、相手はちょっと驚いた表情を浮かべるかも知れません。でもそれは、心地よい驚きなのです。その心理を活用して、親しみを込めて「〇〇さん、~」と呼びかけることで、円滑な人間関係に変わっていきます。人との関係を切ってしまうのは簡単です。その前に、まずは試してみてください。

 

リセットが必要なのか、吟味してみる

若い世代の人たちの間で、SNS上での人間関係の増加にともなって、簡単に人間関係を切ることを何とも思わない傾向が顕著にあります。しかし、実社会の中で生まれて、育んできた人間関係を、あっさりとリセットする前に一呼吸おいて少し考えてみてください。

 

とくに、ある程度の人生経験を積んできた中高年の人たちにとって、それまで培ってきた人間関係は財産でもあるはずです。それを発作的にリセットしてゼロにしてしまうことは、財産を失うことにも等しいのです。とは言え、これは「財産」といえる人間関係についてのこと。明らかに「負の財産」であるのなら、処分を検討しても良いのでしょう。

 

良いところもある、一緒にいて楽しい、でも頭にくることもいっぱいある、そんな人間関係は健全なもので、ずっと大切にしたいものです。発作的にリセットボタンを押すのは踏みとどまってほしいもの。今一度、自分の財産をよく吟味してください。

 

人生の途中には、うまく行かないことばかりだと思ってしまう時期もあります。何もかも嫌になって、すべてリセットしてゼロからやり直したい、とまで思ってしまうような事態に出くわすこともあるでしょう。みんな自分のことを理解してくれない、誰とも会いたくない、誰も信用出来ない、そんな時期が。

 

そんな時には、「自分にはリセットボタンを押す選択肢もある」ということを最終兵器にして心に留めていて欲しいと思います。そう思うことで、心に少し余裕が生まれます。心に余裕があると、人にも優しい目を向けられるようになります。良いところに目が向き、悪いところも「まあいいか」と受け入れられるようになります。

 

縁あっての人間関係

自分も含めて、長所ばかりの完璧な人間は存在しません。短所も含めて相手の事を受け入れられるようになると、自分も相手から短所を受け入れてもらえるんだと考えられるようになります。すると相手からどう見られているのか、人からの評価ばかりを気にする生き方をする必要がなくなります。自然体で付き合える人間関係は、人生の財産と言えるでしょう。

 

縁あって出会い、出会ってもすれ違うだけで終わる人間関係は、人生でおびただしい数だけ存在します。そこから知り合い、友達になる相手なんて、その中でほんのごく一握りです。すごいご縁だと思いませんか?相手にとっての自分も同じです。

 

自分と深いご縁のあるその相手と、簡単に関係を切るなんて、すごくもったいないことではないでしょうか。相手の考え方や価値観も認め、短所も含めて受け入れ、大切に人間関係を育んでいきたいものです。

 

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