どんな職場でも人間関係が付きまとうものです。自分を含め、身の回りで人間関係を理由に仕事を辞めているという人はいませんか。私自身、人間関係で職場を辞めたことがある一人でもあります。
例え、辞めないとしても何とか職場で働き続けていることができるのは人間関係を上手く保つ努力を日々しているからですよね。職場の人間関係は近くなりすぎても遠くなりすぎても上手くいかないもの。バランスが大切です。
今回は職場の人間関係について、自分の気持ちをどうコントロールしたらよいのかを考えていきましょう。
職場での人間関係
私たち必ず人と関わって生きています。職場でも上司や同僚、部下、取引先やお客さん、利用者などそれぞれの立場の人間関係が存在しています。特に、取引先やお客さんのように一時的に顔を合わせるという間柄とは異なり、毎日顔を合わせる会社の顔ぶれの中では人間関係を保つことへの努力が必要になります。
職場の人間関係を大別すると
- 上司との人間関係
- 部下との人間関係
- 同僚との人間関係
上記3つに分けることができます。
この関係の中で自分の立ち位置をきちんと見極め、ブレない気持ちを持って仕事に臨むことができれば、職場での人間関係のトラブルを防ぐことができます。しかし、私たちは感情を持った人間なので職場で人と関わっているうちに心が乱れ、動揺するということがしばしば起きてしまいます。
職場の人間関係に悩む時には孤立や孤独を感じている
私たちが職場での人間関係に悩み、辞めたいほどの心情になっている時は職場で孤立したり、孤独感を持ってしまっていると考えられます。誰しも、就職した直後から皆が敵のような存在であるということはないでしょう。上司や同僚の誰かが「困ったことがあったら言ってね」「相談にのるよ」「助け合っていこう」と、一度は声をかけてくれていることでしょう。
しかし、一旦人間関係の悩みを抱えてしまうと、なかなか自分の思いを外に向けて相談することは難しいものです。そして、1人で抱え込むうちに職場での周りの人の言葉や行動、視線の全てが自分に相反するもののように感じていくということも少なくありません。周りを敵のような存在に感じてしまうと、一層思考は悪い方に向かってしまいます。
何気ない言動に疑心暗鬼になってしまい、会社にいくこと自体に嫌気が差していきます。そして、最初は思い込みだったことがあったとしても、自分の態度や行動から周りにも引かれてしまい、思い込みや勘違いに気が付かないまま本当に孤立してしまうのです。
人間関係の悩みは思い込みだけではないでしょうが…
職場における人間関係で孤立してしまった時、最初はある程度の思い込みから始まっているかもしれません。もちろん、思い込みではなく明らかにいじめやハラスメントがあるということもあります。しかし、私たちは人の心を100%知ることはできません。
そのため、自分の勘違いや思い込みという可能性も少しはあるかもしれないと、心のどこかに留め置きましょう。
そうしないと、職場を転々とする「辞め癖」がついてしまいます。自分の考えが100%疑いようもなく正しいということや、自分のことだから自分が感じていることが全てだという考え方は危険です。
では、人間関係で孤独感を感じないようになるためにはどうしたら良いのでしょう。
孤立しても平気な方法
「孤立しても平気な方法なんて!孤立や孤独は到底耐えきれない」という人もいるでしょう。そう強く感じる人はそもそも孤立しない才能を持っているといえます。良い意味で、長いものに上手に巻かれたり、要領よく立ち振る舞うことできる人でしょうから、大丈夫です。読み飛ばしても大丈夫。
しかし、そうはいかない、という少し不器用な人は参考にしてください。
孤立しても平気な方法は、本当に孤立はせず自分の気持ちをコントロールすることで「孤立が怖くなくなる」ということです。
孤立が怖くなくなる考え方~その1 相手を理解する余地をもつ~
孤立が怖くなる考え方を持つコツは、相手を理解するという余地を持つことです。例えば、あなたを悩ませている上司や同僚、部下は本当に嫌な人ですか。
その人は「24時間、365日、1秒も逃さず嫌な人間」でしょうか?
職場で発生している人間関係はたまたまの立場で偶然に出会った人間関係です。その人のほんの一面しかお互いに見えていない関係なのです。人間的に全否定することはあまりに不幸な関係です。
相手の見えていない部分、例えばその人の「親としての顔」「奥さんに尻にしかれている夫としての顔」「高校球児だった顔」を想像すると少し相手を受け入れる気持ちが生まれるでしょう。
寛容さは相手を受け入れるという感情であり、そしてそれは孤立から自分を解き放つきっかけになります。
もし、既に職場で孤立していたとしても「でも、あの人を理解できる、許せる自分がいる」という考えを持っていれば、仕事と人間関係を上手く切り離して接することができるでしょう。仕事と人間関係を上手く切り離して接することができれば、孤立は怖くなくなるはずです。
孤立が怖くなくなる考え方~その2 ニュートラルな心を持つ~
ニュートラルな心。これこそが今回、1番お伝えしたいことです。ニュートラルの意味は「中立・中性」です。
車のマニュアル車ではシフトチェンジの度に一旦ギアをニュートラルに入れますよね。今はオートマチック車が主流なのでわからない方もいるでしょうが、お料理やお寿司の食べ方で言うと、次のものを食べる前にその都度水を飲んだりガリを食べたりすることに似ています。
ニュートラルな心のコントロールは、起きる出来事に左右されないよう、動揺を引きずらないように一旦心を「無」に戻すという方法です。リセットするという表現もできます。
ニュートラルな心を保つことの実例を紹介
では、ニュートラルな心を保つことの好事例を紹介します。ある、高齢者の施設での話です。高齢者の施設では看護師、介護職員、リハビリ職員、栄養士、事務職員と多種多様な職種が働いています。専門職種が集まっている女性が主流の人間関係で、人間関係が難しい職場ということが言えます。
実際に、専門職種同士はプライドが高く、何かにつけて意見が合わないということがありました。特に、この例での高齢者の施設では時々顔を出す医師よりも、長年勤務している看護師長が実権を握っていました。この看護師長は利用者である高齢者を軽んじる言動や介護職員を見下すような態度が常の人でした。
権力と強い言動に押され、多くの職員がその看護婦師長にひれ伏しているようなそんな職場です。そのような中で、本来であれば直属の上司は医師だけであるリハビリ専門職の女性がいました。リハビリ専門職と言えば病院などでは「先生」と呼ばれ、看護師と同等か上の立場です。しかし、彼女は偉ぶることもなく、看護師長に逆らうでもなく淡々と日々の業務をこなしていました。
介護職員も多くは表立って反発はしませんでしたが、看護師長や師長に同調する看護師への陰口は酷いものでした。それは看護師側からも同様でしたので、両職種間の人間関係は悪いものでした。
施設の利用者様の生活目標を達成するための検討会議や、利用者様に楽しんでもらうため行事の企画会議の場では人間関係の悪さがいつも露呈してしまいます。しかし、そのような時にいつも緩衝材のような役割を果たし、皆が嫌がる仕事を進んで引き受けてくれる人がいました。それが、リハビリ専門職の女性でした。
当時、介護職員だった私は彼女に「なぜいつも穏やかで冷静でいることができるのか、傲慢な看護師長に不満はないのか」とたずねました。
すると彼女は言ったのです。
「最終的に利用者様にとって良いということが達成されるということが一番の目的。だから、その間に起きる言葉のやり取りや面倒臭い人間関係に構っていられないでしょ。先にある目標を達成することだけに目を向けていたら気にならなくなるよ。」
私はその言葉から、目標を達成することや思い描くゴールを目指すことをいつも念頭に置くようにすると、本当に何が重要で、何が重要でないかが分かった気がしました。
自分の信念や意地を曲げて嫌な相手にひれ伏すことが許せないということが問題ではなく、いかに上手く雑音や障がいをかわして確実にゴールできるのかが仕事では重要なのです。
その後、施設ではふとしたきっかけから「心をニュートラルにする」という勉強会が開催されました。そこで私は、リハビリ専門職の彼女の心の保ち方が更に分かった気がしました。この勉強会以後、職場での立ち振る舞いが変わった人がいればそうでない人もいました。
しかし、話が混とんとしてくると一旦大きく深呼吸する人や、言いたいこと口に出す前に一旦、言葉を飲み込んで考えているという人が増えたのは事実です。
心をニュートラルにできると人ひとりが強くなる
心をニュートラルにできる人が増えると、自分で考え、人に惑わされることなく行動できる人が職場には増えていきます。
それは、目標達成やゴールに向け、その時何をすることが最優先かの見解が個々の判断に任せても一致しているということでもあります。誰しもが適切な自己判断ができるようになるのです。
1人で決め、行動することは決して孤独なことではありません。適切な判断で行動できる人は心の持ちようがブレない、強い人です。職場でそのような人が増えると、業績が上がり、業務がスムーズにいくようになります。
仕事と人間関係を上手く割り切ることができるということができると、人間関係のトラブルが相当な確率で起きにくくなるのです。
まとめ
いつの時代、どんな職場でも人間関係の難しさはあるものです。自分が正しいと思うことをすることで孤立や孤独感を感じ、精神的に参ってしまう人もいるでしょう。
しかし、目標やゴールを見据え、耐えがたい心境になった時は大きく深呼吸をして気持ちをニュートラルに戻すことを身につけましょう。心の動揺が鎮まり、何がゴールなのかの確認ができれば、また強い気持ちで走り出すことができるはずです。