苦手なものや慣れないことに不安やストレスを感じてしまうことは誰にでもあります。勇気を持ってチャレンジできれば良いのですが、ついつい避けて通ろうとしてしまったり、後回しにしてしまったりという方も多いのではないでしょうか?確かに、不安やストレスを避けられるのであれば、できるだけ避けて通りたいと考えてしまいます。
ですが、このような『回避行動』を続けていると、集中力の欠如や自信の喪失、さらには健康まで害すことに繋がるということをご存じでしょうか?
今回は、不安やストレスを避けようとする『回避行動』について、そのデメリットと『回避行動』をしないための解決方法についてお伝えしていきます。
回避行動をしてしまうワケ
誰しも苦手な事や面倒な事、不安を感じる事を避けようとしたり後回しにしたりした経験があるはずです。
例えば、
「面倒だから夏休みの宿題は最後までやらない」
「体調が悪いけど、病院は苦手だから行かない」
「大人数で交流することは慣れないから飲み会などに誘われても断る」
というようなことです。
誰しも、これまでにこのような回避行動を1度は行ったという記憶があるでしょう。または、回避行動が癖になってしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
では、人はなぜ回避行動を行ってしまうのでしょうか。まずはその原因についてご説明していきます。
人は課題を本来より大きく見積もる
人は、目の前にある課題を本来より大きく見積もってしまいます。やってみると実は簡単に終わらせられることでも、その何倍も難しいことだと予想します。「嫌だな、面倒だろうな」と思っていても、いざ取り掛かってみると予想よりもだいぶ早く課題が解決したという経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、人間の脳の構造上のものなので、ほとんどの人が目の前の課題を本来より大きく見積もるのです。
昔、人間の祖先がまだ大自然の中で生活していたころ、リスクを考えず行動することは命を落とすことにも繋がり、とても危険でした。そのため、人間は何か行動を起こす際に最悪のパターンを想定することやリスクを大きく見積もることを無意識に行うようになったのです。
そのため、目の前の課題がとても難しく大変なものに思えてしまうということは、誰にでもあります。そこで「勇気を出してやってみる」ということができるか、それとも回避行動を取ってしまうかによって、その後の結果が大きく変わってしまうのです。
回避行動を取るデメリット
では次に、回避行動を取ることで起こるデメリットについてお話していきます。回避行動を取ることは、目の前の不安やストレスを一度は回避することができます。そのため、その瞬間は不安の解消などのメリットがあるかもしれません。ですが、回避行動のメリットはその一瞬の安心感だけであって、その後には沢山のデメリットがあります。
回避行動を取ることによっておこるデメリットを幾つがご紹介していきます。
集中力の欠如
人は、何かを後回しにしていると脳がそれをずっと覚えていようとします。そのため、常に「後回しにしたこと」の情報を保ちながら、他の作業や行動をすることになってしまいます。
他の事をやっていても、無意識に脳は後回しにしたことにメモリを使ってしまうので、作業の進みが遅くなる・集中して行えないなどの支障が出てしまうことがあります。
例えば、学生の頃に経験したことがある方も多いかもしれませんが、「宿題が終わっていないのに遊びに行って、結局宿題のことを心配してあまり楽しめなかった」というような状態になってしまうということです。
結局ストレスが溜まる
脳は、終わってしまったことについては忘れることができますが、中途半端になっていることや達成できていないことは忘れることができません。忘れることができないどころか、より強く記憶します。そのため、後回しにしたり避けようとしたりすると、そのことばかりが記憶に残って、もやもやしてしまいます。
確かに、はじめは「ストレスを回避することができた」と安堵するかもしれません。ですが、結局は回避したことが強く記憶に残ってしまうので、後回しにしたことを気にすることになってしまいます。本当は「やるべきだ」と思っていることを「やらない・後回しにする」ということで、知らず知らずのうちにそれをより強く意識してしまうため、ストレスが溜まってしまうのです。
自信を失う
回避行動は、自信の喪失にも繋がります。苦手な事や不安に感じる事を避け続けていると、元々苦手だったことがさらに苦手になってしまうためです。人は成功体験を積み重ねていくことで、苦手を克服したり自信をつけたりすることができます。しかし、回避行動を続けていると、成功体験を積むことができなくなってしまいます。
回避行動を取ることで、失敗することはなくなるかもしれませんが、それと同時に成功を体験する機会も失ってしまうのです。過去の失敗体験はより鮮明に記憶に残り、成功を体験する機会はなくなってしまうため、時間が経つにつれてどんどん自信を失っていきます。
また、今までなら少し勇気を出して挑戦できていたことでさえ、回避行動を続けることで苦手意識を持ってしまい、できなくなるということも起こります。回避行動によって自信を無くしていくと、普段なら少し頑張って達成していたことでも「自分なんかにできるわけがない」と考えてしまうということも全く珍しいことではないのです。
体にも悪影響
ストレスや強い不安は健康を害す原因になります。上記でもお伝えしたように、回避行動を取ることでストレスが溜まってしまったり、自信の喪失により強い不安を抱くようになったりすると健康に悪影響を及ぼします。
ストレスや不安を感じる事が多くなると、精神的にも身体的にも様々な悪い影響が表れます。自律神経を乱してしまえば体のあちこちに不快な症状が現れます。また、ストレスや不安を抱え続けていると、うつ病などの心の病に発展してしまうことさえあります。
回避行動をしないための解決策
いかがだったでしょうか。回避行動を取ることのデメリットについてお伝えしました。回避行動を続けると、上記のように自身に様々な悪い影響が及ぶということをご理解いただけたのではないでしょうか。
ですが、目の前に回避したいほど苦手な事や不安な事が現れた際、どうしても避けて通りたいと考えてしまう人は多いはずです。では、一体どうすればこの回避行動をやめる事ができるのでしょうか。ここからは、回避行動を取らずに済むための方法についてご紹介していきます。
日時を決める
「やるべきことを後回しにしがち」「やらなければいけないけど、面倒」という方は、具体的にやる日時を決めましょう。後回しにしてしまう方は、「いつかやろう」「緊急性はないから今じゃなくていいや」と考えてしまいがちです。ですが、そのように考えていると結局いつまでたってもできないということがほとんどです。
やらなければならないことがある時には、先にやる日時を決めてみてください。例えば、「何となく体調が悪いけど病院は苦手だから今度でいいや」と考えてしまうという方は、「次の休みの日、○時から病院に行く」と日時を決めましょう。そうすると、今まで「今度」だったものの日程がしっかり定まります。日程を決めたら、スケジュール帳などに書き込むとさらに効果的です。
後回しにしてしまうという場合は、日程を組んでしまえば意外とすんなりできてしまうということも多いです。日程を決め、スケジュール帳などに書き込むと「この日にはこれをやらなければ」という気持ちになっていくので、それまでに覚悟を決める事もできます。「今度でいいや」と後回しにすることが癖になっている方は、まず日時を決めることから始めてみましょう。
小さな成功体験を積み重ねる
大人数が苦手という方は、突然「大人数が集まる飲み会」に誘われても回避行動を取ってしまいますよね。そこで、ハードルを下げて少しずつ挑戦する方法を取ってみてください。例えば、「3人までなら大丈夫」なら、まず共通の友人などの比較的居心地の良い相手4人で食事をする。それができたら、5人。慣れてきたら職場の人達と、まずは比較的小人数から。というように少しずつ慣らしていく方法です。
先ほどもお伝えした通り、苦手だからと回避行動を取ってしまうと、克服する機会を失ってしまいます。少しずつ慣らしていくことによって「成功体験」を積み重ねていけば、苦手意識も少しずつ薄れていきます。苦手を克服するには、「慣れる事」がとても重要です。まずは、小さな目標を立てて、それを成功させる。そして少しずつ目標を大きくしていけば、いつの間にか避けていたことも自然とできるようになっていきます。
最初は小さな成功体験だったとしても、それを積み重ねていくことが自信を持つことに繋がります。「この程度では意味がない」と決めつけず、まずは小さい目標を達成することから始めていきましょう。
まとめ
回避行動を取ることで起こるデメリットと、回避行動を取らないための解決策についてお伝えしてきました。
誰しも苦手な事に挑戦するには、とても勇気が必要です。自分の目の前にある課題が、自分にとってはとても大きく難しいものに見えてしまうことも多いでしょう。ですが、そのたびに回避行動を取ってしまうと避けることが癖になってしまいます。回避行動を取っても、自分自身にとってデメリットになることは多くても、メリットはほぼありません。
一度は避ける事ができたとしても、結局やらなければならないことなら不安が大きくなる前に挑戦してしまった方が良いと思いませんか?覚悟を決めてやってみると、意外と簡単に解決できたということも珍しくありません。
「回避行動をやめたい」と考えている方は、ご紹介した解決策を試してみてください。苦手な事や不安を感じるものはすぐには克服できないかもしれません。ですが、少しずつ挑戦することが自身の成長に繋がるということを覚えておいてください。