世の中には沢山の分野、種類の仕事があります。求人を見ると、専門職や技術職以外で目に付くのがパート職としての募集。多くの職場でパート職として働いてくれる人が求められています。
そして、長寿大国である日本ではパート職の募集年齢には高い設定が見られます。私のような40代など、まだまだ若い、若い。夫の扶養の範囲内で家計の助けにと、40代でパート職に就こうという人も身の回りにはたくさんいます。
また、今の40代半ばから後半の人は20歳前後の就職期が就職氷河期だった年代です。せっかく大学を出ても未だに非正規職員、パートで繋いできたという人も多いはずです。中には私のように氷河期にはとりあえずはパート職で就職して正社員になり、結婚や出産後にまたパートから…という人もいるでしょう。
このように考えると40代女性のパートの人間関係はただでさえ複雑なはずが、更に様々な事情をはらんで一層複雑化しているのではないでしょうか。
なぜパート職として働くのか~目的によって生じる違和感~
冒頭で触れたように、40代女性がパート職として働く目的はそれぞれ異なります。大きく分けると以下のようなことになると考えます。
- 自分のお小遣い稼ぎ
- 家計の足しのために働く
- 生活がかかっているので働く
簡単に言うと、パート職として働いて得た給与がどの程度生活を維持するため充てられるのかによって、深刻度に差がありそうです。この深刻度の違いが仕事に対する姿勢や職場での立ち振る舞いに影響すると、パート職の人間関係にストレスが生じてくるでしょう。
誰が何のために働いているのかが気にならないほど、皆が同じように仕事に打ち込んでいれば何も問題は生じません。しかし、人間は「感情」に捉われる生き物なのでちょっとした考え方の相違からくる違和感がきっかけで人間関係がおかしくなってしまいます。
働いている目的別にトラブルリスクを整理してみよう
では、40代女性がパート職として働く目的別に、人間関係にトラブルが生じやすいリスクが何かを整理していきましょう。
1. 自分のお小遣い稼ぎに働いている人
一定の貯金があり、自分以外にお金がかかるところがない独身の人など。他のパート仲間の目には「所詮余裕のある人」「腰かけ」「責任感がない」など、かなりシビアに映ってしまうリスクが高いです。
2.家計の足しのために働いている人
旦那さんの扶養の範囲で働きたいというパターンの人が多い。主婦であるため、家事と子育てのバランスを上手く保つことができる無理のない時間で働くというスタイルが多くなります。
子育て世代の主婦が多いため、子供の行事がある土日や参観日、家族旅行などでは仕事を入れることができません。若い独身のパートと子育てがひと段落した世代のパート、そして一定の年齢に達していても未婚であるパートなど各方面のパート仲間を敵に回す可能性をはらんでいます。
3.生活がかかっているので働いている人
家族の生活を支えるために働いているケースです。「半端ない必死感」「上司に取り入っている」「無駄に残業を付けている」「シフトを都合よく入れている」など、こちらの場合は報酬を得ようと躍起になっているような印象を持たれてしまう可能性があります。
シフトの組み方などからパート仲間との人間関係が難しくなってしまうというリスクが考えられます。
パート職として働く人の目的は人それぞれです。
特に40代女性の事情は子育てや親の介護、既婚、離婚、未婚とライフステージにおいて多様な経験や関係が絡み合っている時期です。ただでさえストレス社会である現代、パートで働くことでストレスが更に蓄積されることが考えられます。
ここであげた3つのパターンのパートが、同じ仕事を同じ場所で同じ時間を共有するということを想像しただけで何かが起こりそうです。
パート同士の意識の違いによる人間関係の難しさ~きっかけはボーナス支給日~
パートには基本的にはボーナスは出ません。私がある公立病院で事務職の補助としてパート勤務をしていた時の話です。
公務員の補助をするパート職の仕事
私が働いていた公立病院のパート職の業務内容は、公務員である正職員の方の事務作業の補助です。電話応対や各種書類作成、給与計算補助が主な仕事になります。
もっと細かい部分の業務としては、時代が時代でしたので女性パートは正職員の人のために日に3回、お茶汲みの仕事がありました。当時のお茶汲みは、正職員の人の嗜好を頭の中で覚えて日に3回出すという仕事でしたが、部署内に正職員が10名ほどいたので、慣れるまではお茶汲みが一番大変な仕事でした。
人によってブラックコーヒー、砂糖、クリームの有無、煎茶、番茶、など嗜好が異なります。その上、個人の茶碗も覚えなくてはいけません。そして、どんなに仕事の途中でもお茶の時間になるとパート職員はその手を止めてお茶出しをしなくてはいけないのでした。それは案外大きなストレスでした。
私が配属された病院事務局には、40代女である私の他にパート2名の合計3名。パート3人とも40代です。仕事内容は3人でそれぞれにメインの業務をある程度定めて分担し、お茶汲みは当番制でした。
公務員のボーナス計算をするパート職
4月にパート採用されたばかりの私は、電話応対と公立病院であったため医師、看護師のシフトを打ち込む作業や病棟で使う書類の作成や補充がメインの仕事でした。他の2人は長く勤務していたので、毎月の正職員(公立病院なので医師や看護師、市役所から派遣されている事務職など総勢100名くらい)の給与計算の補助を任されていました。
給与計算と言っても、パート職なので正職員の方が最初に計算して間違いがないかもう一度電卓を打つという確認作業でした。
公務員のボーナス支給月である6月は、100人もの正職員の賞与計算作業で担当の正職員の方の業務は目に見えて忙しそうでした。まだパソコンが一般的に普及していない時代ですので事務作業も今に比べるとアナログです。
そのため、ボーナスの計算補助としてパート職3名全員が充てられました。毎回そうしているのだろうと、新人の私は思いましたが私よりも先にパートとして働いていたパート仲間の一人が驚きの発言をしました。
「ボーナス支給日は私、休むから。それにボーナスの計算の仕事はパスだから。」
私は絶句しましたが、もう一人のパート仲間は「またか」という薄い反応で特に異議を唱える様子もありません。
何も知らない私は「どうして、何かあるの?」と聞いてしまいました。
すると再び驚きの返答があったのです。
「だって、私たちにはボーナスが出ないのよ。人の貰うボーナスの計算はしたくないし、明細書を貰って浮かれる様子も見たくないもの。」と言うのです。
羨ましいという気持ちは分からなくもありませんが、ボーナスの計算業務を放棄するということを言ってのけているのです。
「ま、確かに毎日公務員と同じ仕事をしているのにパートは不公平よね。大体大事な仕事は主にパートがやってんだし。自分のお茶くらい自分で入れろってんの。」ともう一人のパート仲間が理解を示しました。
こういった具合なので、公務員である正社員のボーナスの計算という作業はやりたくないと言ったパートの彼女はせず、残りのパートが行う流れになってしまいました。
やりたくない仕事はしないで許されてしまう人
「いくらパートだから、不公平だからといってやりたくない仕事を放棄してもいいのか。」私は腹がたちました。仕事を放棄した彼女は40代後半の独身です。彼女の前職は大手都市銀行です。独身であるため、お金は自由に使える身です。
公務員に対して対抗心が強いばかりではなく、パート仲間をやや見下しているよう言動が普段から見られます。ボーナスの計算をしたくないという考えに一定の理解を見せた彼女は共働きの主婦です。子供はなく、夫との生活を満喫しています。家計の足しにと働いています。
彼女は「どうでもいい」「どっちでもいい、やらなかったら終わらないからやる」という考えです。
私は、前職は正職員として事務系の仕事をしていたので、課せられた仕事を当然しないといけないという考えです。事務経験と正職員という経験をしていたので、少し他の2人よりも気持ちに余裕があったかもしれません。しかし、ここでは新人であるため到底自分の意見は言えませんでした。
この3人の雰囲気、関係からして「やりたくない仕事はやらない」と宣言すればそれは通ってしまうのでした。
とうとう異を唱える~だが、しかし、人間関係が…~
「本当にボーナスの計算はしないのだろうか、どうやって仕事を割り振りするのだろう」不安な気持ちのまま6月に突入。とくに誰も仕事の割り振りを切り出しません。すると、ある日の昼食時間“どうでもいい、どっちでもいいさん“が口火を切りました。
夫の扶養内で働いている彼女です。「あの、去年もおととしも黙ってやってきたけど、ボーナスの計算をしないのも支給日に休むのもちょっとおかしくない?」
するとボーナス支給日に休む宣言をした彼女が、「何、言ってんのよ。何であんなにだらけている公務員のボーナス計算をしなくちゃいけないの。馬鹿ばかしい。」と反論。
「でも、仕事だしパートはどこに行ってもボーナスはないじゃないですか。それに、ボーナスの日に休むなんてなんか意識しているみたいで、逆に嫌じゃないですか?」と続けて私が問うとそれはスルー。多分、新人パートだからか。
結局、その後は重苦しい空気になってしまい、業務の割り振りなどの話はできなくなりました。それどころか、それまでうまく分担していた仕事やお茶汲みに関しても規則性がなくなり、気が付いた人がやる、誰も動かないことへのプレッシャーに負けた人が先に動くというような状態になってしまいました。
それは「働いたら負け」「先に動いたら負け」の世界観です。
いよいよxデー~正社員のボーナス支給日~
結局、正社員の人と私、そして、“どうでもいい、どっちでもいいさん“の3人でボーナスの計算をし、ボーナス支給日を迎えました。宣言通り、例の彼女はお休みです。ボーナス支給日ということで、部署内はもとより病院全体が何となく正職員の人たちの様子は浮かれた感じに見えました。
パートにボーナスがでないということは納得している私と、ボーナスが出るであろう夫を持つ扶養内で働いている“どうでもいい、どっちでもいいさん“は、多少「いいねー、公務員はボーナスも高いしね」と話しながら過ごしていました。
すると、15時になると毎回ボーナス支給日恒例とのことで、事務局長からパート職員にケーキの差し入れがされました。
私たちパート2人はお礼を言い、美味しく頂きました。休んでしまった彼女も分もあったので、迷いましたが冷蔵庫に保管しました。
正職員とパート職という別が合っても、事務局長は病院の中の事務部門のトップであり上司です。ボーナスが出ないパート職への気配りはありがたいと感じました。
パート職のプライド
翌日出勤してきた彼女に、“どうでもいい、どっちでもいいさん“がケーキを差し出しました。何となくぎくしゃくしてしまっていた私たち3人ですが、さすがに40代。いつまでもこのままでもいられないだろうという思いから何事もなかったかのように言います。
「事務局長が今回もケーキの差し入れをくれたのよ。美味しかったから休憩の時にでも食べて。」
すると、彼女は言い放ちました。
「所詮は夫に食べさせてもらっているお気楽な人は気持ちに余裕があっていいわね。あなたたちにプライドはないの」
…プライド。そう、彼女が職場で一番意識していたのはプライドなのでした。
40代パート職の関係が上手くいく方法
私はこの経験から、パート職として働いていく以上、最大限気を付けることは何かを考えました。そして人間関係が上手くいくポイントとして2つ押さえておくことにしました。
- 相手がどのような目的でパート職をしているかを忘れない
- プライドを傷つけない
1. 相手がどのような目的でパート職をしているかを忘れない
パート職で働くということは結論から言うと「働いている=お金」です。つまり、多かれ少なかれお金を必要としているから働いているには違いないのです。
しかし、それだけで同じ目的を持った仲間として一括りに考えて接すると痛い目にあいます。先に整理しましたが、パートで働いて得るお金の使い道が人によって異なるからです。得るお金が生活費に占める割合や重さが違うのです。
そのことを意識し、ある程度線引きして接すると相手の地雷がどのようなことかが分かってきますので、地雷を踏まずに済みます。地雷はコンプレックスでもあると言えます。
- 「自分のお小遣い稼ぎ」の人の地雷…どうせ一人、お気楽
- 「家計の足しのため働く」の人の地雷…お気楽、旦那に食べさせてもらっている、腰かけ
- 「生活がかかっているので働く」の人の地雷…切羽詰まっている、必死、苦労
2. プライドを傷つけない
40代でパート職として働いている人は想像以上にプライドが高いことがあります。年齢から考えるといくつかの職歴がある可能性もあり、今は何らかの事情でパート職に甘んじているものの「自分はこの程度ではない」という思いを秘めているかもしれません。
やたらと正社員を褒めたり、会社の都合よく仕事を引き受けたりする姿を見せると自分のことでもないのに噛みつかれてしまいます。
まとめ
40代女性のパート同士の関係は「パートとして働いている自分以外の自分」を確立している年代でもあるので人間関係が難しいです。家に帰れば主婦や母であり、実は夫は社会的に地位が高い、本人も高学歴で大手企業に勤務した職歴があるなど、見た目ではわからない部分に存在意義を持ち続けているかもしれないからです。
トラブルを回避するのためには、仕事はこなしプライベートには深入りしないこと、「所詮私たちはパートだし」という言い方はしない方が無難です。そうすることでトラブルを勃発する地雷を踏む可能性はかなり低くなります。