「こんな人生、生きていることに意味なんてあるのか」、「生きる意味がわからない」、カウンセリングの中で、そんな思いを聞くことがあります。

 

大切なものを失い、ひどい悲しみの中で、生きる意味まで失ってしまったり、直接大きな困難にぶち当たっていなくても、日常の中でふと生きる意味について考え思い悩んでしまったり・・・

 

そして、「生きる意味って何?」と、答えの出ない問いに思考が飲み込まれ、自分の存在意義を疑い、自分だけ置いていかれたような孤独を感じてしまうことがあります。

 

今回は、そのような、人生の意味に悩む方に向けて、おすすめの対処法と生きる意味に悩むあなたに知ってほしいことについてお話をしていきます。少しでもお役に立てれば幸いです。

 

対処法

生活リズムを整える

ゆっくりとあたたかいお風呂につかり、日付が変わる前には寝てたっぷりと睡眠をとりましょう。質のいい睡眠をとるためには、夜の寝る前の行動も大切です。

 

スマホを見ながら寝落ちする、1日の反省をする、といった活動は睡眠の質を妨げるので、控えた方がいいでしょう。

 

朝は早めに起きて、三食食べる、適度な運動を心がけるなど、平凡で基本的な健康行動が何事にも大切です。

 

頭の中のことをはき出してみる

1人静かに、落ち着ける場所で、頭の中にあるごちゃごちゃしたものを、紙に書き出してみましょう。

 

不満、不安、気持ち、頭の中にわいてくるイメージ、やりたいこと、頭の中で綯い交ぜになっているものを、1つ1つ頭の中から取りだしてみてください。

 

書き出すだけでも、すっきりしますし、見えていなかったものを見える形にすることで、客観的に振り返ることができます。

 

マインドフルネス瞑想をしてみる

「瞑想」と聞くと「スピリチュアル?」、「宗教?」と抵抗感がある方もいるかもしれませんが、マインドフルネス瞑想は、科学的な実践です。Google社で採用されたことで話題になったので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

私たち人間は、「今この瞬間」を生きているようでいて、過去の記憶や未来の不安にとらわれながら生きています。

 

マインドフルネスとは「今、この瞬間」を大切にする在り方のことです。今、この瞬間、五感で感じていることを、評価をせず、ただ観察します。

 

マインドフルネス瞑想のやり方

①姿勢を正す

椅子に座って背筋をのばし、目は閉じるか一点を見つめます

②呼吸に集中する

呼吸に注意をむけます。

無になろうとしなくてもいいので、ただただ呼吸に注意を向けます。考え事が出てきたときは、無理に振り払おうとも深入りしようともせず、「こんなことを考えているんだな」ということに気づき、また呼吸に注意を戻します。

 

慣れてきたら、日常生活でも「今この瞬間」に注意を向けるように心がけ、観察してください。今までなんとなく過ぎていた毎日を、五感に注意を向けて過ごすよう意識してみてください。そうすることで、自分の感情も冷静に観察できるようになっていきます。

 

自然に触れる

変化のない環境ほど、脳の疲労がたまります。温度や湿度の保たれたオフィス、脳にとっては、疲れがたまる環境なのです。

 

早起きをして朝日を見る、海に行く、きれいな景色を見る、山を登る、など、自然を感じる活動は、おすすめです。

 

自然の中では、木々が風になびく音、川のせせらぎ、鳥のさえずり、木漏れ日、草、花、香り、様々な風景が広がります。自然の揺らぎや変動は、脳の疲れを癒してくれます。

 

脳を癒し、頭をスッキリさせて、また自分の考えに戻るのはどうでしょうか。冷静に考えることができるかもしれません。

 

おいしいものを食べる

食べることは生きることです。バランスの取れた健康的な食事や大好きなものをお腹いっぱい食べる。それから考える。

 

どんな状況でもお腹は空くし、美味しいものは、いつ食べても美味しいです。その体験は、私たちに幸せを与えてくれます。

 

いつもは、テレビを見ながら、スマホを見ながら、なんとなく、食べ物を口に入れて空腹を満たしていた食事を、見た目、香り、食感などを感じながら、目の前の食事に思いを巡らせながら食べてみてください。

 

やりたいことを思う存分やる

やりたかったことはなんですか?やりたいのにできていないことはありませんか?今、悩んでいるのは、生き方を見直す機会なのかもしれませんね。

 

毎日が充実していて、やりたいことがあって、そのためにやるべきことがあって、実行できている時、「生きてる意味なんてあるのか」とは、あまり考えないですよね。

 

きっと、今の人生に満足できていないのではないでしょうか?今のままではダメだと思って何かを変えたいのではありませんか?

 

抑えていた気持ちをオープンにして、自分の気持ちに素直に、やりたいことに思う存分時間を使ってみるのもいい方法だと思います。死ぬまでにやりたいこと、行きたいところ、見たい景色、思い出してみてください。新しいことにチャレンジしてみるのもいいですね。

 

過去の時間は戻っては来ませんし、過去には戻れません。今この瞬間が、あなたの人生の中で、一番若い時です。遅いことはありません。これから、生きがいを見つけていきましょう。

 

人と接する

一人で悶々と悩んでいても、そこから抜け出すことができません。一人で悩む時間も、きっとムダではありません。でも、人と接する時間を持つことも大切だと思います。

 

今の気持ちを相談することで、手を差し伸べてくれる方が必ずいます。相談でなくても、他愛もない会話の中で救われたり、今までと違う人と交流することで視野が広がったりすることもあるでしょう。

 

身近な人に相談をしづらいのであれば、SNSで訴えることも1つの方法ですし、現実的な問題があるのであれば弁護士に相談する、心のケアが必要なら専門家にお願いする、なども考えられます。あなたは一人ではありません。

 

本を読む

生きる意味は、ずっと昔からいろんな人たちに考えられてきたテーマです。哲学者、心理学者、小説家、多くの偉人が苦悩しながら、それぞれの返答を見つけてきました。

 

本は、先人達の考えや知恵に触れることができるツールであり、視野を広げるきっかけになると思います。以下に、私のおすすめの本を紹介します。

『君たちはどう生きるか』吉野源三郎(著)羽賀翔一(イラスト)

中学校2年生の「コペル君」こと本田潤一君が、いろいろな悩みに直面し、おじさんとのノートのやり取りを通じて、生きるために大切なことに気づいていきます。

「今君は大きな苦しみを感じている。なぜそれほど苦しまなければならないのか。それはね、コペル君。君が正しい道に向かおうとしているからなんだ。」

私は、自分を受け入れること、一歩を踏み出すことへの勇気をもらいました。生き方を見つめ直すきっかけになると思います。

生きる気力をなくしてしまった青年が小さいおじさんとの対話を通じて、成長をしていく物語です。

 

心理学の専門書は、難しい言い回しをしていて、難解なものが多いのですが、この著書は、それを噛み砕いて、かなりわかりやすく、コミカルに描いています。それでいて、ポイントを押さえて解説されているので、おすすめです。

 

考えを発信する

今、あなたが思い悩んでいることにも何か意味があるかもしれません。その感情、思い、経験、それを発信してみるのはどうでしょうか。

あなたが何を考えて、何をして、どう行動するのか、それを発信することによって、救われる方もいるのではないでしょうか。

 

生きる意味について考えるのをやめる

悩むことにも意味があります。一方で、意味なんて考えず、楽しむことができる人もいます。生きる意味を考えるのが人間の本質ということと矛盾していると思うかもしれませんが、考えれば考えるほど、わからなくなっていくのも真理なのです。

上に紹介した『君が生きる意味 人生を劇的に変えるフランクルの教え』に、こんな例え話が出てきます。若い僧侶が、いつもお酒を片手に楽ばかりしている老師に質問をします。

老師、なぜ厳しい修行に打ち込まないのです。

民衆と酒を飲み交わし楽ばかりしています。

我が弟子よ、では、聞くが厳しい修行をして、どうするのじゃ。

師よ、修行をすれば自分を律することができるようになります。

我が弟子よ、自分を律することができて、どうするのじゃ。

(中略)

師よ、この世の叡智を知り常に心穏やかな人間になれます。

我が弟子よ、この世の叡智を知り心穏やかな人間になって、どうするのじゃ。

師よ、民衆とともに生き、人生を謳歌できます。

我が弟子よ、それがワシじゃ。

向上心を持つこと、目的を持って努力をすることを否定しているわけではありません。ただ、そんなに肩肘張らなくても、大丈夫。

人生には必ず意味があります。それが今わからなくても、そんな自分を受け入れて、力を抜いて、平凡な日常生活を大切に過ごすことも対処法かもしれません。

 

生きる意味に悩むあなたに知ってほしいこと

私たちは、普段、生きることの意義がよくわからなくても、特別な生きがいがなくても、それほど憂慮せずに、生きていくことができます。しかし、ふと何のために生きているのかを考えた時に、突然の虚しさにおそわれます。

 

人は、自らの人生に意味を求める欲求があり、それが満たされないことによって不調を来すと訴えたのは、精神科医のヴィクトール・E・フランクルでした。そして、「人生の意味」を見出すことを重視したロゴセラピーを提唱しました。

 

フランクルは、ナチス強制収容所に送られ、絶望的な状況に立たされながら、冷静に人々を観察し、自身の理論を確立していきます。

 

悲惨な環境の中で、悪魔になっていく者と自身を見失わずに生き抜く者。その違いは、そこにいる自分の使命を見出せるかどうかでした。そして、その体験を綴った「夜と霧」は、世界で大ベストセラーとなり、希望を見出す人々の姿が、多くの人に影響を与えました。

 

どんな時も人生には意味がある。どんな人の、どんな人生にも、なすべきこと、満たすべき意味が与えられている

 

出典:諸富 祥彦 『どんな時も、人生には意味がある:フランクル心理学のメッセージ』 PHP研究所, 2014, 75ページ

 

人生の意味を考えることは人間の本質であり、その過程で、価値観や存在理由が揺らぐことは、誰にでもあります。でも、どんな時でも、人生には意味があるのです。

 

また、人間とは、人生に意味を問う存在ではなく、人生から問われている存在であると述べています。人生の中で与えられた課題と真摯に向き合い、答えていくことでしか人生の意味を見出すことができないのです。

 

そして、人生と向き合うためのヒントを3つ挙げています。「創造価値」、「体験価値」、そして「態度価値」です。

 

・創造価値

自身の活動を通して、誰かの役に立てたり、何かを創り出したり、世の中に何かを与えることで実現される価値。

・体験価値

美しい景色を見たり、芸術を鑑賞したり、楽しいこと、美味しいものに感動したり、人の温かさや人との触れ合いで助けられたり、世の中から何かを与えられ、受け取ることで実現される価値。

・態度価値

現実をどう受け止めるか、どのような姿勢で生きるかによって実現される価値。どんなに人生の可能性が制約を受け、創造や体験によって価値を実現することができなくなったとしても、どうふるまうか、どう向き合うかで価値を実現できるということなのです。

 

極限状態では、良心を失い、道徳観念が地に堕ちてもおかしくはありません。事実、多くの人たちが、仲間のパンや衣服を奪い取り魔に落ちていきました。

 

その一方で、自分が餓死寸前でありながら、自分のパンを仲間に与えたり、温かい言葉をかけたりする人たちもいました。

 

そのように、同じ状況であっても、向き合う姿勢は選択でき、価値を生み出すことができる。それが、「態度価値」です。

 

自分を置く環境を選択していくことも1つの方法ですが、その環境で、しっかりと向き合い、態度価値を実現しながら、人生を充実したものにしていきたいですね。

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。何か1つでもピンとくるものがあったのであれば嬉しいです。繰り返しになりますが、人生の過程で、迷ったり、悩んだりしてしまうこともあると思います。でも、必ず生きる意味はあります。

 

生きているだけで価値のあることなのです。その中で、あなたはどう生きていきたいですか?それを考えてみてください。

 

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